ホモデウス 上
「ホモデウス(上)」ユヴァル・ノア・ハラリ著 (河出書房新社/2018/9/6)
人類の偉業
人類は何千年にも渡って飢饉、疫病、戦争を解決することに苦心してきました。
しかし、現代に住む我々はそのすべての問題を解決しつつあります。
もちろん、完全に解決したとは言い難いですが、それでも、100年前と比べたら世界はより良いものとなっていることは間違いないでしょう。
そこで、人類は新たな課題を必要としました。
そこで目標とされたのが不死、幸福、神性の獲得です。これらの目標に関してはホモデウス(下)で詳しく説明されています。
人類はなぜ地球の支配者となれたのか
そもそもなぜ人類は他の動物に対して支配的な地位を築けたのでしょうか?
それは、多くの人間同士を結びつける能力があったためです。
人間は共同主観的な物語を共有することで、他の動物では考えられない大規模な協力を可能とします。
人類は歴史上様々な虚構を生み出しました。
宗教、貨幣、国家、民族など様々のものが挙げられますが、我々もまたそういった虚構の中に生きていることは間違いありません。
それは人間がその虚構の中に人生の意味を見出すからです。
中世の人々が信仰に人生の意義を見出したように、私達もまた、現代においてお金を稼ぐことを生きがいにしている人を見れば虚構の中に生きていることを理解できるのではないでしょうか。
歴史における「虚構」
歴史を学んでいると、なぜそのようなことにその時代の人々は命をかけたのか疑問に思うことが多々あります。
宗教戦争や革命など枚挙に暇がありません。
しかしそれは、現代に生きる我々についても当てはまります。
なぜ私達は身を削ってまで働き、より多くの収入を得ようとするのでしょうか?
日本では働かなくても生活保護などで生きることは可能であるにもかかわらずです。
その理由は社会的に良いことだと信じられているからです。
身近なところでは、学生は若く最も活力に満ちた時間の多くを机の前で無駄にして過ごします。
それは勉強することは良いことであり、学歴を得ることは社会で生きる上で有利になると周りに教えられたからです。
そして実際に学歴を得た人間が制度を作る側に回ることで、まるでそれが客観的事実かのように社会が変容していきます。
しかし、そこにはなんら客観的事実は含まれていません。
実際、学歴の有無は既存の評価制度にうまく適応できたかどうかが重要なのであり、頭の良し悪しはあまり関係ありません。
それに学歴がなくても社会的に成功する人は世の中にごまんといます。
私達もまた社会が作り出した虚構に踊らされているのです。
歴史を学ぶ意義
それでは、我々は社会の虚構とどう向き合えばいいのでしょうか。
歴史を学ぶ意義がそこにあると考えられます。
歴史を学ぶということは、ある時代に虚構が作られ、またそれが違う時代に壊されていく過程を眺め、ある時代の人にとって最も重要に見える事柄が、子孫にとっては全く無意味になることを理解することです。
私達自身のことを知るためにはこの世界に意味を与えている虚構を読み解く必要があるのです。